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ねぶた最優秀の北村さん、師匠の父に恩返し

2017.08.07

ねぶた大賞、最優秀制作者賞の額が掲げられた大型ねぶた「紅葉狩」の前に立つ麻子さん(中央)。「ねぶたが喜んでいる」と笑顔を見せた=6日、青森市のラッセランド

ねぶた大賞、最優秀制作者賞の額が掲げられた大型ねぶた「紅葉狩」の前に立つ麻子さん(中央)。「ねぶたが喜んでいる」と笑顔を見せた=6日、青森市のラッセランド

 「まだまだ、手に届かないと思っていた」。今年の青森ねぶた祭で、初めて最優秀制作者賞に輝いた女性ねぶた師の北村麻子さん(34)が受賞発表から一夜明けた6日、心境を語った。第6代ねぶた名人の隆さん(69)を父に持ち、2012年のデビュー以来、父の背中を追いながらも、気負わず、ねぶた作りに情熱を注いできた。6年目で悲願を成し遂げ、運行団体も最高賞のねぶた大賞を受賞。二重の喜びと偉大な先人が紡いできた賞の歴史と重みをかみしめながら一層の精進を誓った。

 麻子さんが今年手掛けた大型ねぶたは「紅葉狩(もみじがり)」(あおもり市民ねぶた実行委員会)。本人いわく「定番の題材」だという。その定番に新たな息吹を注ぐため紅葉を前面に出し、武者と鬼女との戦いの際、風に乗って紅葉が舞う様子を色鮮やかに表現した。狙いが奏功し、審査では、紅葉の新たな表現に挑み、観衆に感動を与えた点などが高く評価された。

 麻子さんはデビューの年にいきなり優秀制作者賞を受賞。一方で、初の女性ねぶた師としてさまざまな点で注目された。隆さん、その双子の弟で最優秀制作者賞を複数回獲得した蓮明さん(69)らに囲まれ、ある意味、厳しい環境にもあった。しかし「プレッシャーを感じても仕方ない。今できるものを精いっぱい作るだけ」と過度に意識することなくねぶた作りに打ち込み、結婚や出産も経て、6年目で栄冠をつかんだ。

 6日の表彰式。青森ねぶた祭実行委員会の奈良秀則委員長は「女性ねぶた師として、話題が先行する時期もあったかもしれない。その時期を乗り越え、ねぶたにかける情熱が賞にたどりついた。新人、新鋭という言葉はもはや似合わない」と最大級の賛辞を贈った。

最優秀制作者賞を受賞した麻子さん(左)のスピーチを聞いた後、思わず目頭を押さえる父・隆さん(中央)。右は隆さんと共に優秀制作者賞を受賞した、麻子さんのいとこの北村春一さん=6日、青森市のワ・ラッセ

最優秀制作者賞を受賞した麻子さん(左)のスピーチを聞いた後、思わず目頭を押さえる父・隆さん(中央)。右は隆さんと共に優秀制作者賞を受賞した、麻子さんのいとこの北村春一さん=6日、青森市のワ・ラッセ

 受賞後のスピーチでは、感情があふれたのか終始、言葉を詰まらせながら、感謝の言葉を並べた麻子さん。その晴れ姿を見つめていた隆さんも思わず目頭を押さえた。隆さんは照れ笑いを浮かべながら「(大賞受賞が)初めてだから感動が大きかったんだろうな」。

 娘とは、ねぶた師として師弟関係であり、ライバルでもある。それでも「ちょっと複雑な気持ちもあるけど親子だから。親も(賞を)もらったという感じ。デビューから6年での大賞はびっくり。すごい」。師として、そして父としての喜びが言葉ににじんだ。

 「一番の賞をとれたということは、師匠である父に一つ恩返しができたのかな」と麻子さん。今後の目標を「ねぶたは大事な心のふるさと。子どもたちがその気持ちを抱いてもらうためにも、輝き続けるねぶたを作るだけ」と、りんとした表情で前を見据えた。

(東奥日報社)